CLO元年③ 物流を経営アジェンダに変える言語

物流を経営アジェンダに変える言語——CLOが役員会議で語るべきこと

物流は「現場の話」だったのか

長らく、物流は現場が管理するものだった。コストは所与のものとして扱われ、経営会議で物流が議題に上がるのは、重大な事故やクレームが発生したときくらいだった。
2026年4月のCLO義務化は、この構造を変えようとする制度的な介入だ。物流を「経営幹部が責任を持つテーマ」に格上げすることで、企業全体の意思決定の中に物流を組み込もうとしている。
しかし、制度が変わっても、CLOが経営会議で使う「言語」が変わらなければ意味がない。

目次

「物流の言語」と「経営の言語」のギャップ

物流の現場で使われる言語と、経営会議で求められる言語は異なる。
物流の現場では、ピッキング精度、誤出荷件数、在庫回転率、庫内の生産性といった指標が日々使われている。これらは現場の管理には欠かせないが、経営会議の場でそのまま語っても、他の役員には「自分ごと」として受け取られにくい。

経営会議で有効なのは、物流のパフォーマンスが企業全体の利益・キャッシュフロー・顧客満足にどう影響しているかを示す言語だ。たとえば「誤出荷率が0.X%改善すると、返品処理コストと顧客対応コストの合計でX百万円が削減できる」「在庫水準をX日分圧縮すると、運転資本がX億円改善する」といった表現に変換されて初めて、経営層の意思決定に接続する。

CLOの役割のひとつは、この翻訳を担うことだ。

経営対話に必要な3つの視点

物流を経営アジェンダに乗せるために、CLOが持つべき視点を3つ整理する。

① コストの構造を把握する

物流コストは多くの企業で「見えにくいコスト」だ。輸送費・倉庫費・人件費・包材費が複数の部門や子会社に分散して計上されており、全体像を把握している人間がいない、というケースも珍しくない。CLOが最初に取り組むべき仕事のひとつは、物流コストの全体像を一枚の絵に描くことだ。
どこにいくらかかっているかが見えて初めて、どこを変えれば何が変わるかという議論ができる。

② 物流と事業成果を結びつける

物流の改善が売上・利益・顧客満足にどう影響するかを示せると、経営会議での議論が変わる。リードタイムの短縮が顧客の発注頻度に影響するか、在庫精度の向上が欠品率の低下を通じて機会損失を減らせるか。こうした因果関係を仮説として持ち、データで検証する姿勢が求められる。

③ 投資対効果を語る言葉を持つ

物流改革には投資が伴う。システム導入、設備更新、人員体制の見直し…これらを「コストがかかる」ではなく「何年で何を回収できるか」という言語で語れるかどうかが、CLOとしての信頼性を左右する。投資対効果の試算は荒くてよい。重要なのは、経営層が判断できる粒度の情報を提供することだ。

「物流の専門家」である必要はない

ここまで読んで、「そこまでやるには物流の深い知識が必要ではないか」と感じた方もいるかもしれない。しかし、CLOに求められるのは物流の専門的な技術知識ではない。物流を経営の言語に翻訳するためには、現場の実態を把握する力と、経営の文脈に接続する思考力が必要だ。前者は現場責任者との対話と、プロセスや数字を読む習慣から得られる。後者は元々経営幹部として持っているはずの能力だ。
CLOは「物流のプロ」ではなく、「物流と経営をつなぐ役割」だと捉えると、就任直後のアクションが見えやすくなる。

まとめ:CLOの言葉が、物流の地位を変える

物流が経営アジェンダになるかどうかは、最終的にはCLOが何を語るかにかかっている。現場の数字をそのまま持ち込むのではなく、経営の意思決定に接続する形に変換して届ける——この翻訳作業こそが、CLOという役職に期待されている本質的な仕事だと考えている。

制度が変わった今、物流が「現場の話」から「経営の話」になれるかどうかは、CLO自身の言語選択にかかっている。

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木下 雅幸

サッカーワールドカップが終わりましたね。
サッカーの世界もデータ革命が起きたように、物流もデータが変革をもたらすと信じています。
物流×ITコンサルタントより。