リモートワークの定着化に不可欠な「業務プロセス」の整備

2020/9/4/ Masayuki Kinoshita

リモートを始めたものの...

コロナウィルスの拡大リスクに伴い、業務をリモートワークとする企業が増えていますが、一方で「どのように進めていけば良いか分からない」、「自宅勤務としたものの、業務がうまく回っているのか分からない」という現場も多くあるように思います。

そこでリモートワークを運用に乗せて定着化させる上でのポイントを以下のように整理してみました。

管理面

  •  業務支援体制と運用の確立
  •  リモートワーク環境の整備・支援

業務面

  • 業務の電子化基盤の構築
  • 業務プロセスの整備

その他

  •  ストレスマネジメント

管理面においては、持ち帰り可能なPCの設定・準備といったハード面、各家庭における通信費用の助成や連絡体制の確立、働き方が大きく変わったことによるストレスへの対策などのソフト面が挙げられます。 本文では、上記の中の業務面に着目します。
業務の電子化を可能とするにはハンコ文化など広く根付いている商習慣を覆すことは単一企業の取り組みだけでは難しいですが、電子署名技術などを取り入れた業務運用の準備などは今すぐにでも始められるものです。業務に限らず、様々なことをデジタル化することで生産性を高めたり、改善に生かしたりして新たな価値を生み出すことを「DX = デジタル・トランスフォーメーション」と称され注目されて久しいですが、話題性が先行していた印象です。

ただ、ここ最近のコロナウイルスの問題などもあり、リモートワークの促進に業務の電子化は必須となり、緊急度が高く不可避なビジネス課題となりました。 業務の電子化を支える技術的なツールは様々です。

ハード面では、確定申告の電子化などにも使われるカードリーダーやスキャナー、そして当然ながらPCやタブレットなどの端末と通信環境があります。
ソフト面では当社でもコミュニケーションツールとして活用しているSlackやTeams、Skypeがあります。幾つかのツールを試している段階ではありますが、アドオン機能等を駆使してリモート上での出退勤の管理などに生かす取り組みを始めています。また、作業成果物を共有し管理するツールとして、BoxやGoogle Driveなどがあります。

更には、RedMineやBacklogなどのタスク管理ツールなど、恐らくIT企業やIT部門などでは普段から使われているものが、その他の業種でも活用効果が高いと思われます。

ツールはツールでしかない

上記に上げたツールはかなり一般的なもので、他にもより生産性を上げることのできるツールや更に利用価値の高いツールもあると思います。
ただ、これらは業務を進める上で活用する手段でありツールで、大事なポイントは業務として

何をするのか(What)、
誰とするのか・誰に報告するのか(Who)、
どこから情報を取得するのか・納品するのか(Where)、
いつまでにするのか(When)、
何故その業務を行うのか・目的は(Why)、
どのように実施するのか(How)
などの5W1Hです。

以下に改めて整理します。

What: 実施すべき仕事内容がはっきりしていること
Who: 従事する仕事に関する関係者が明確であること
Where: どこに必要な情報が保管されているか、成果物はどこに保管すべきか明確であること
When: 納期が明確であること
Why: 実施すべき仕事の目的が明確であること
How: 実施方法が明確であること

「Job Description」がある欧米、無い日本

少しだけ個人的なことを書かせて頂くと、最初に就職した豪州の企業では、面談時に「Job Description」と呼ばれる「職務記述書」が提示された記憶があります。「Job Description」には、雇用される側が担う業務と責任範囲が書かれており、逆にこれらの業務以外は実施する必要がないというように、かなり明確に線引きがされていました。実際の現場では、「それは私の仕事ではない」とはっきりと主張する社員がおり、業務の隙間を如何になくしたり埋めたりすることが管理者の一つの重要な仕事となっていました。

一方日本では、多くの企業ではそのような「Job Description」は明文化されておらず、ある意味「阿吽の呼吸」の中で、良い意味での「忖度」を働かせて業務を行うことが「善いことと」とされてきた部分があるかと理解しています。

業務プロセスを整理することでリモートワークが円滑に

職場で顔を合わせることが限定的になり、いわゆる「空気感」を共有することが困難となった環境において、「阿吽の呼吸」に期待することは現実味がありません。
今こそ、自社内及び自社の顧客や仕入れ先を含むパートナー企業にわたるビジネスプロセスを定義し、仕事の流れを整備することをお勧めします。

ビジネスプロセスとは、社内外からの要求を実現するための活動とその集合体を定義したもので、管理レベルに沿ってフロー化したものがビジネスプロセスフローです。このドキュメントには、前述した5W1Hが明確に記載されていることが重要で、書き手によりプロセスの粒度やフォーマットが違っていると全体での運用には適さないものとなります。リモートワークをうまく軌道に乗せ、これまで通りかこれまで以上の生産性を出すために企業がすべきことは、管理者を含む会社側が5W1H全ての項目て明確な情報を示せる必要があります。

これら5W1Hを正確且つ関連付けて表現するビジネスインフラとしてBPMツールというビジネスアプリケーションがあります。このようなビジネスアプリケーションは今後企業がリモートワークを推進する上で不可欠な業務の電子化を支える重要なものとなっていくと考えています。