【プロジェクト効率化事例】
プロジェクト運営管理ツールをiGrafx上に構築
三菱重工株式会社様

2020/4/20

大規模プロジェクトに対応した
プロジェクト運営管理ツールをiGrafx上に構築

三菱重工グループでは、iGrafx上にプロジェクト運営管理ツールを構築。プロジェクト管理の標準化とデジタル化に取り組んでいる。ツールの詳細と導入の経緯および効果について詳しく伺った。

三菱重工株式会社

■所在地: 東京都千代田区丸の内三丁目2番3号
■設立: 1950年1月11日
■資本金: 2,656億円(2019年3月31日現在)
■社員数: 連結:80,744人、単独:14,534人(2019年3月31日現在)
■事業概要:  パワー、インダストリー & 社会基盤、航空・防衛・宇宙

目次

三菱重工グループの概要

– 三菱重工グループについてご紹介ください。

三菱重工グループは、1884年の三菱重工業株式会社(以下、三菱重工業)の創立以来、ものづくりとエンジニアリングのグローバルリーダーとして、造船をはじめ、交通輸送システム、民間航空機、発電システムなどのインフラ、宇宙システムにいたるまで、幅広い分野に高度な技術力で日本国内外へ総合ソリューションを提供してきました。

事業領域は陸・海・空から宇宙までにわたり、三菱重工の事業を中心に国内外約300社の事業会社が、設計、製造、建設から販売、アフターサービス、一般サービスまで、グループとしてシナジー効果を発揮しながら、世界に誇る最先端の技術力とたしかなものづくりで、社会を支えるビジネスをグローバルに展開しています。

グループで利用するプロジェクト運営管理ツールをiGrafxに構築

– iGrafxの利用状況について教えてください。

三菱重工グループでは、プロジェクト管理力強化活動において、プロジェクト運営のガイドラインを整備しています。その活動を通じて制定した「プロジェクト運営要綱」は従来、紙でしたが、それをデジタル化したプロジェクト運営管理ツールをiGrafx上で構築し、「ProAct(プロアクト)」と名付けました。

– ProActにはどのような機能が実装されているのでしょうか。

ProActは一言で表すならば、化学プラントや造船、発電所などの大規模プロジェクトを運営管理するためのツールです。
ProActには、標準化されたプロジェクト運営に於いて実施しなければならない要項が、BPMN(*1)に準拠した業務フロー図で記載されており、業務の手順や相関関係を確認することができます。
各要項には次のような関連資料や確認事項がリンクされており、フロー図をクリックするだけで必要な資料や情報を閲覧できるようになっています。

  • 標準書や規定類、事例集、類似案件、準拠法などの資料
  • 成果物や提出書類などのサンプルやテンプレート
  • プロセス間の相関関係図
    実施すべき業務RACI(*2)の一覧

さらに、「プロジェクト管理要領」は標準で静的なものですが、動的なプロジェクトが標準に準拠して進められている状況を確認するために「進捗管理システム」を構築しました。
BPMNからフロー情報を、iGrafxからはリポジトリ内の関連情報をiGrafx APIを使ってデータ連携し、プロジェクトのステータス情報や成果物を登録できるようになっており、プロジェクトに関わるメンバーから役員まで、進捗状況を確認・管理できるようにしています。

実例を挙げると、基本的に受注品に関しては本社のコーポレート部門の「受注に関わるリスク管理要項」に従って稟議を実施することが義務づけられています。しかし、事業会社のプロジェクトマネージャやプロジェクトメンバーが、このプロセスに不慣れであったり、詳細を理解していなかったりする場合もあります。

ProAct上では、事業会社における見積プロセスとコーポレート部門の関連について業務フロー図で可視化され、同プロセスで実施すべき事項や必要な情報、テンプレート、過去の類似案件などを確認することができるようになっています。

(*1)BPMN:Business Process Model Notation。OMG(Object Management Groups)で標準化が進められているビジネスプロセスの表記法。
(*2)RACI(レイシー)とは

R:実行責任者(Responsible)
業務実行者。(タスクの実施に責任を持つ人)。

A:説明責任者(Accountable)
業務の成果物や実施内容に説明責任を持っている者
(成果物の承認者)

C:協業先・協力者(Consulted)
業務実施に対し、(Rから)意見を求められる役割。
(相談を受けアドバイスや専門的な知識を提供する人)

I:報告先(Informed)
業務の進捗状況や、問題発生時に、(Rから)報告を受ける人

三菱重工業株式会社 石沢 欣也氏

「フロー図をクリックするだけで必要な資料や情報を閲覧できるようになっています」
(三菱重工業株式会社 事業リスク総括部 リスク管理室 リスク評価グループ スーパーエキスパート 石沢 欣也氏)

– ProActは、すべてのグループ全体の事業会社が共通で利用しているのでしょうか。

当社は多種多様な事業を手掛けていますが、事業が大型化・複雑化してきた影響で製造業にもプロジェクト運営のスキルが必要となっています。また、見積プロセスには共通部分が非常に多いと認識しています。ですから前述した様に「受注に関わるリスク管理要項」のように共通化されている業務要領が制定されました。しかし、たとえば化学プラント事業と造船事業ではプロジェクトの進め方や関連する法律なども異なります。そのため、基本的には事業(会社)ごとに内容をアレンジしています。

– ProActの構築および運用体制について教えてください。

ProActの構築および運用は、基本的にプロジェクト支援グループで対応しています。

まずプロジェクト管理プロセスの要素分解を行います。次に、各要素をiGrafx上で業務フロー図に落とし込んでいきます。その後、各要素に関連する資料や成果物などのリソースを業務フロー図にリンクしていきます。

内容が専門的で項目数も多いので、手間と時間がかかる作業ではありますが、Microsoft Excelやほかの情報共有ツールを使うのに比べれば、iGrafxを使った情報の登録・修正作業はとてもスムーズです。

プロジェクト管理の標準化と質の向上、リスク管理の強化をめざす

– ProActを導入した背景を教えてください。

ProActに限らず、プロジェクト管理力強化活動へ取り組む背景には、グループとしての競争力の向上はもちろんですが、プロジェクトのグローバル化、大規模化、競争の激化、環境対策といった市場環境の変化による影響が少なくありません。さらには、マクロ的視点で見ると「プロジェクト管理の標準化と質の向上」、そして、「リスク管理の強化」というねらいがあります。

– ではまず、「プロジェクト管理の標準化と質の向上」について教えてください。

これまではグループの事業会社が独自の手法でプロジェクト管理を行ってきました。さらに言えば、プロジェクトマネージャ経験と知識によって細かい手法は異なっていました。そのため、グループとして対応しなければならないプロセスの進め方が異なることもありました。

まずはグループとして、プロジェクト管理を標準化および最適化することで、プロジェクト管理手法のバラツキをなくし、底上げを図るというねらいがありました。

また、プロジェクト管理の各プロセスで必要な資料はほとんどが紙の文書だったため、「どこに必要な文書があるのかわからない」、「膨大な文書の中から必要な情報を探し出すことが難しい」という状態が発生していました。

そのため、最小限のリソース、コスト、納期でプロジェクトを進めなければならない中で、本来のプロジェクト管理にかける時間を確保するのが難しく、新たな人材を育成する余裕もないという状況を改善しなければ、グループの最大の強みであるマニュファクチャリング力の低下にもつながりかねないと考え、プロジェクト管理のプロセスや関連文書を、プロジェクトマネージャだけでなく、管理される側の担当者自らも確認しながら、プロジェクトの進行を補佐するツールが必要だと考えました。

三菱重工業株式会社 野田 恭司氏

「プロジェクトの上流工程におけるリスクは納期やコストへ大きく影響します」
(三菱重工業株式会社 インダストリー&社会基盤ドメイン 事業戦略部 プロジェクト支援グループ 主席技師 野田 恭司氏)

– それでは、「リスク管理の強化」に関してもお願いします。

プロジェクトの上流工程におけるリスクは納期やコストへ大きく影響し、大規模プロジェクトにおける影響は膨大なものとなります。これまで、リスクを最小限に抑え、突発的なトラブルに対応するためには豊富な経験やノウハウが必要でした。それを経験の少ないプロジェクトマネージャでも対応できるようにするために、各工程におけるリスクを徹底的に洗い出して、事前にその予防策を管理プロセスに反映しておけば、リスクを未然に防ぐことができます。

また、過去の事例やトラブルをデータベース化して、参照することができるようにすることで、想定外の突発的な事故やリスクが発生した場合でも、その影響を最小限に抑えることができると考えました。

シンプルな操作性と優れたメンテナンス性を評価

– iGrafxを採用した経緯を教えてください。

当初はMicrosoft Excelやほかの情報共有ツールでの構築も検討し、試したこともありましたが、要項と関連文書との関連付けや業務フロー図の作成に手間がかかり、修正となるとさらに手間と時間がかかりました。iGrafxではこれらの作業をシンプルな操作で対応でき、効率的に登録・修正ができます。また、登録したデータはそのままデータベース化されるのでメンテナンス性も優れていると評価しました。

閲覧環境に関してもブラウザがあればアクセスでき、必要な項目をクリックするだけで関連情報や文書を展開・確認できる使い勝手の良さや、成果物を登録できるので過去の事例として登録できるといったところも理想的でした。

最終的には、国内外における導入実績が豊富なこと。そして、サン・プラニング・システムズや同社パートナーのイノベーティブ・ソリューションズのサポート体制もしっかりしていることから、採用を決めました。

業務効率化によるプロジェクトマネージャのモチベーション向上にも期待

– ProActを導入したことでどのような効果がございますか。

これまで、「参照すべき規定・情報・法令などを見つけることができない」、「だれか知っている人に聞かないとわからない」といったことも頻繁に発生していましたが、各要項について、「いつ」、「だれが」、「何を」、「どういう手順で」進めるべきかを容易に確認し、関連文書なども簡単に見つけられるようになりました。 加えて、各工程における成果物を登録できるので、これまで難しかった過去事例などの共有も可能となりました。

このようにプロジェクト管理業務が効率化、省力化、迅速化されたことで、プロジェクトマネージャのモチベーション向上や若手の育成につながっていくと考えています。

また、管理レベルも向上しています。紙文書の場合は内容が更新されているにもかかわらず、古い内容のものを参照してしまっていることも少なくありませんでした。ProActでは、文書の内容を更新すればリアルタイムで反映され、複数の要項にリンクされている場合でも一元的に管理できるので、利便性だけでなくプロジェクト管理の精度向上にもつながっています。

一方、副次的なものとなるかもしれませんが、システムを構築する際に矛盾する内容や記載が見られました。システムを構築しながら、そのような部分の整合性を図ることができたことも成果の一つと捉えています。

サン・プラニング・システムズとイノベーティブ・ソリューションズへの評価と期待

– サン・プラニング・システムズとイノベーティブ・ソリューションズへの評価や期待があればお聞かせください。

サン・プラニング・システムズとイノベーティブ・ソリューションズには、丁寧かつ迅速に対応してもらえたのでとても助かりました。今後も変わらないサポートや支援に期待しています。

要望としては、iGrafxに関して海外版と日本語版でバージョンの違いがあるので、できるだけ早期に日本語版も最新バージョンの提供をお願いしたいと思います。

株式会社イノベーティブ・ソリューションズ 李 春実(左)
森 渉(左中央)

株式会社サン・プラニング・システムズ 青木 伸夫(右中央)
出口 康志(右)

お忙しい中、貴重なお話をお聞かせいただきありがとうございました。

* 取材日時 2019年6月
* 記載の担当部署は、取材時の組織名です。

* iGrafx® FlowCharter®、iGrafx Process™、iGrafx Platform®はiGrafx LLC(アメリカ合衆国)の製品です。SOX+はサン・プラニング・システムズの製品です。iGrafx®、iGrafx FlowCharter®、iGrafx Process™、iGrafx IDEF0®、およびiGrafx Platform®は、アメリカ合衆国、および/またはその他の国々における、iGrafx LLCおよび/またはその子会社の商標または商標登録です。
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