【舞台裏】資産フロー管理システムの開発

2022/3/9

Author: Chanisara Kajornchaikul, Gakuto Ootsu

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昨今のビジネスは、技術の進歩によって常に変化し、成長しています。企業は後れを取らないため、常に変化を認識し、受け入れなければなりません。
業務用システムは目新しいものではありませんが、企業は業務を改善し、データをよりよく管理するために、ますます業務用システムに依存するようになってきています。会社の大小にかかわらず、ビジネス要件を満たす優れた業務用システムが重要であることは言うまでもありません。

こんにちは。アソシエイトコンサルタントのチャニサラです。 そのようなシステムを提供している会社の社員として、業務用システムに興味をひかれます。ですので、多くの人が関わり多くの時間と労力を必要とする開発工程を、もっと知りたいと思うようになりました。当社は資産フロー管理システム(AFMS; Asset Flow Management System)というソリューションを提供しております。
今回は、そのAFMSの新バージョンがリリースされたので、「AFMS開発の裏側(Behind The Scenes)」をお伝えしたいと思います!

資産フロー管理システムの開発背景とは?

資産フロー管理システム (略してAFMS; Asset Flow Management System) とは機械や設備などの有形資産(タブレット端末やモバイル端末など)を一元管理するシステムです。購入から管理までの一連のプロセスを管理することができます(下図参照)。
AFMSメニューバー

SFMエージェントとの最初の接触からプロジェクト開始へ

AFMSは、CEO 細江氏とEVP 木下氏の製造業・物流業での長年の業務経験から生まれました。このプラットフォームが(業務端末などの)資産のユーザーやメーカー、オペレーション代行者の資産管理のプロセスを最適化するために有益であると考えたことが誕生のきっかけです。バングラデシュのオフショア開発チームがGeneXusを活用して共同で開発し、シニアシステム開発者 ベヘスティ氏、リード導入エンジニア 迫水氏、プロダクトマネージャー 大津氏が指揮・管理を行っております。大津氏は、お客様とエンジニアの橋渡し役として重要な役割を担っています。

まずは、細江氏から、このソリューションが生まれた経緯について伺います。

AFMS開発のインスピレーションはどこからきましたか?

細江氏:
売り手と買い手のように対立軸にある両方が満足してくれるプラットフォームを作りたいと思っていました(プラットフォームの良さ、魅力については社長インタビューで話しています)。

物流センターで受ける修理依頼は確かに複雑な工程ですが、それだけの機能のシステムを作っても全くメリットがないと思っていました。例えば100台のハンディターミナルが1年に6回しか壊れないとして、年に6回しか使われないシステムは作ってもコストと効果が見合いません。しかしながら、資産管理というのは誰かがやらなくてはいけない業務です。また、資産管理は本社機能として持ちたくても、物流センターや倉庫は全国各地にある場合コントロールができないことも多くあります。そこで資産管理と修理依頼の両方の機能を統合しようと思いました。

メーカー目線で考えると製品を販売した際、メーカーが直接販売するのではなく、販売会社を介す場合が多くあります。更には、一次店二次店などが介在するなど…自分自身もメーカーにいたのでよく分かりますが、自分が出荷したものが今どこにあるのかが分からない時が多くあります。そのため、リコールになれば製品の所在がわからず、多大な時間と費用をかけて探すことになります。パソコンなども、最初にユーザー登録依頼通知がいくことがありますが、実際登録する方は少ないのではないでしょうか。本来メーカーは自分たちが作ったもの・出荷したものの行先を把握したいはずなんです。このように中々繋がりにくいメーカーとユーザーがAFMSで繋がるようにしたいと思いました。そうすれば、修理を依頼する際も修理に出している物、現在の状態や保管場所、修理履歴や費用などメーカ、ユーザー両サイドから分かるようになります。

またメーカーサイドの話になりますが、リコールの際に回収先が分からずメディアにお金を出して広告を打ったり、調査会社に頼んだりなど多額の費用も掛かります。何より今はユーザーから、“回収しようという努力をしていた”というような社会的責任を果たす姿勢を見られる時代です。自分たちで作って出荷した商品のシリアルナンバーや状態が反映され自動的に把握できれば、AFMSというプラットフォームはユーザーよりもメーカーへのメリットの方が大きい気がします。例に挙げた物流センターに限らず、学校、病院、など多数メーカの色々な機器を使う現場での導入・応用が可能です。

AFMSユーザーに期待する反応は?

細江氏:
シンプルですが、メーカーにもユーザーにも便利になった、助かりましたと言ってもらえるのが理想ですね!最初にも話しましたが、片方だけの利害を追求するのではプラットフォームの意味がないと思うので、メーカー・ユーザー両方に満足していただければいいなと思います。

AFMSのコンセプトを理解した上で、次にどのように開発されたのか、シニアシステムエンジニアのベヘスティ氏に話を聞きました。

開発者としてAFMSへの想いを聞かせてください。

ベヘスティ氏:
私が知る限り、資産を管理し、複数の関係者の資産の流れを追跡できる同様のシステムは他にも存在します。しかし、そのようなソリューションは、メーカーや卸売業者が独自に開発するのが一般的です。AFMSの特徴は、我々のような第三者が開発したものであり、将来的にプラットフォームとなる可能性を持っていることです。

AFMSは、メーカーと顧客がリアルタイムでコミュニケーションを取りながら、様々な資産を管理するための共通プラットフォームです。AFMSのようなシームレスなプラットフォームは、効率性を高め、デバイスのライフサイクルを管理する手間を省くことができます。メーカーと顧客がデータのプライバシーを心配することなく、互いに出会うことができる場所なのです。

AFMSの開発の経緯を教えてください。

ベヘスティ氏: AFMSは、GeneXusというローコードプラットフォームで構築されています。GeneXusは複雑なシステムを簡単に開発するための非常に効率的で高度なプラットフォームです。GeneXusは、最適化されたコーディング、効率性、堅牢性を追及するために、人工知能(AI)を使用しています。
GeneXus 17オープニングスクリーン
GeneXus 開発環境画面

現在、AFMSの開発チームはどのようなチーム構成でしょうか?

ベヘスティ氏:
当初は、非常に小さなチームからスタートしました。しかし、要件が増えるにつれて、チームの規模も大きくなっていきました。現在では、開発者、テストエンジニア、プロダクトマネージャーなどがこのプロジェクトに携わっています。プロセスの最適化や機能拡張とは別に、彼らはユーザーエクスペリエンスの向上に専念し、継続的に改善に取り組んでいます。

最初のプロジェクト立ち上げには、どれくらいの時間がかかったのでしょうか。

ベヘスティ氏:
初回ローンチの準備には約1年かかりました。当初は、弊社が提供する複数のプロセスの可視化や最適化コンサルティングをベースに想定したところからスタートしました。その後、最初のデモを経て、お客様である日系大手自動車メーカー様から多くのフィードバックをいただきました。異なる業種の異なる管理プロセスの重要な要件に対応できるようにしたのです。それから1年後、最初のリリースを成功させることができました。

もちろん、その後もお客様の声を聞きながら、機能強化や最適化に努めました。このソリューションは、既に幅広い業務領域での活用が可能な機能を有していますので複数の大手流通会社からお問い合わせをいただいております。しかし、お客様に最高の体験を提供するためには、さまざまな業務シナリオを想定し、それに基づいたエンジニアリングを今後も続ける必要があると考えています。

AFMSの開発工程は複雑そうですね。
どのようにして成功させたのか、その秘訣をお聞かせください。

ベヘスティ氏: 私たちは、このアイデアを実現するために、アジャイル開発手法を採用しました。

アジャイル方法論

ベヘスティ氏:
CI/CD(継続的インティグレーション/継続的デリバリー)を確立しました。毎週、新機能の強化やデプロイを行い、並行してユーザーデータの整合性をきちんと維持しています。変更を追跡するのは時に困難ですが、同時にこのような変更を許容する柔軟性は、AFMSのようなシステムを立ち上げるための成功の鍵です。

※CI/CDとは

Continuous Integration(継続的インティグレーション)とContinuous Delivery/continuous Deployment(継続的デリバリー)の略です。端的に言うと、CIとは、インクリメンタルなコード変更を頻繁かつ確実に行う、最新のソフトウェア開発手法である。

AFMSのような全く新しいソリューションの開発には、どのような苦労があったのでしょうか?

ベヘスティ氏:
当初、このソリューションを作るにあたって、私たちはユーザーエクスペリエンス(UX)を改善し、資産のライフサイクル管理に関連する連続的な手動プロセスを自動化プロセスに統合することを最優先しました。何故ならばAFMSのコンセプトはとても斬新なためです。その後は、お客様に使い始めていただいてから、より多くの機能が必要であることに気づきました。私たちは、要望のあった機能を追加することで、お客様からの声に応えました。
また、システムの改善と最適化のため、データ構造の更新を随時行っています。この更新を行わないと、データの不整合や整合性の欠如を引き起こす可能性があるからです。一般的には、データの整合性を確保することに時間をかけ、最適なデータ構造とインフラを見極めることになります。
しかし、一歩ずつ改善を進めた結果、お客様はAFMSに慣れ、初期段階から容易に導入できるようになりました。

バングラデシュのオフショアチームと密に連携しているそうですね。
バングラデシュの開発チームはどのようにマネジメントされているのでしょうか。

ベヘスティ氏:
はい、その通りです。チームマネジメントの体制は非常に整っています。私たちはアジャイルに則って、スクラムを実践しています。毎週、スプリントがあります。スクラムのツールはすべて揃っていて、とても忠実に実施しています。バングラデシュのチームは、経験豊富で強力なチームであり、全員がそれぞれの役割を献身的に果たしています。
当初は、言葉の壁や時差のために苦労しました。しかし、その後、経験を積みながら、ベストプラクティスと組織的なチームマネジメントを確立し、チームのパフォーマンスを高めています。

※スクラムとは

人々、チーム、組織が複雑な問題に対する適応的な解決策を通じて価値を生み出すことを支援する軽量なフレームワークのこと

※スプリントとは

一貫性を持たせるために、1ヶ月以内の一定期間のイベントのこと

開発者であっても【プロセス】は重要であり、彼がシステム開発時に用いたプロセスは”アジャイル”と呼ばれるものです。アジャイルは、ユニークで新しいアイデアベースのソリューションを開発する際に採用すべき最適な方法論です。
システムソリューションを生み出すには、有能なエンジニアのチームとユニークなアイデアだけでは十分ではありません。ユーザーエクスペリエンスを反映させるメンバーも重要な成功要因です。そこで、このプロジェクトを推進する重要な役割を担っているのが、ISOLのプロダクトマネージャーである大津氏です。そこで、大津氏の役割に迫ってみました。

大津氏は、AFMSのプロダクトマネージャーとして、開発者とエンドユーザーとのコミュニケーションをどのように取っているのでしょうか。

大津氏:
私の主な役割は、ステークホルダーをつなぎ、コミュニケーションを円滑にすることです。そのため、クライアントの要望を翻訳したり、ユーザー受け入れテストを実施したりと、幅広い業務を行っています。iGrafxというワークフローを可視化するBPM(ビジネスプロセスモデリング)ツールを使っています。このBPMツールを活用し業務要件を適切に把握するための可視化フェーズは、ISOLで標準化された製品開発のライフサイクルに組み込まれ、全員が同じ流れ、同じ認識を持つことができるようになっています。パンデミックと言われる昨今では、直接顔を合わせる機会が少なく、ミスコミュニケーションも起こりやすいので、これは非常に重要なことです。このミスコミュニケーションのリスクは、効果的な知識共有のプラットフォームがなければ、より大きくなります。最後に、私が開発者やエンドユーザーをサポートするためにしていることは、彼らの目標や期待に応えるために必要なことは何でもすることです。

iGrafx上で描かれた資産管理プロセスフロー

大津氏は、AFMSのプロダクトマネージャーとして、開発者とエンドユーザーとのコミュニケーションをどのように取っているのでしょうか。

大津氏:
主な課題は、私自身の経験不足からくるものでした。私たちは、1つのプロジェクトから別のプロジェクトへ迅速に移行できるよう、アジャイル方法論を採用しています。しかし、この方法論でプロジェクトマネジメントするのは初めての経験でした。そのため、変化についていけず、まだまだ苦労しています。しかし、スクラムマスターのベヘスティ氏と経営陣のサポートにより、なんとか乗り切ることができています。また、ドメインに関する知識の不足も、私が直面した課題のひとつです。
しかし、ここでも深いドメイン知識を持っている木下や細江のサポートにより、業務の流れをモデル化することができました。その結果、このプロジェクトのロードマップを定義するための重要な要素である、ビジネスプロセスの基礎知識を得ることができました。

大津氏の例から、プロダクトマネージャーは、ソフトウェア開発プロジェクトの成功のためのキーパーソンであることがわかりました。ビジネス、プロダクト、そしてクライアントの3者の接点に立つ人物だからです。プロダクトマネージャーがいなければ、関係者間のコミュニケーションギャップが生じ、製品の方向性が定まらないままになってしまいます。

今回の取材で、プラットフォームやソフトウェアアプリケーションの開発がいかに難しいものであるかということを理解することができました。
AFMSの”舞台裏”は本当に興味深いですし、もし私が自分のプロダクトを作りたいと思ったときに、より良い準備をできるようになれたと思います。

当社独自のソリューションの一つであるAFMSの舞台裏インタビューはいかがだったでしょうか。
私たちは、AFMSが機器のユーザーとメーカー双方の資産ライフサイクルをシームレスに管理するために役立つと心から信じています。AFMSはSaaS(Software as a service)製品ですので、改善のサイクルに終わりはありません。マクロとミクロの要求に合わせて、お客様の効率と生産性を高めるサービスを提供する努力を続けていきます。それが、皆様の幸せにつながると信じています。AFMSの詳細については、こちらをご覧ください。

3/30(水)ウェビナー開催!
資産管理ができる。修理工程が見える。
資産フロー管理システム(AFMS)のご紹介

資産管理全体の業界課題をふまえ、AFMSでできること
導入メリットを、デモを交えてご紹介致します。

参照

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