【特集】物流改革④「業務フローは誰が作るのか?
物流パーソンの育成事情」

2020/2/4/ Masayuki Kinoshita

さて、「業務フローが無いと何が困るのか?」という視点で業務フローの重要性を第2回・第3回と書いてきましたが、今回はその重要なドキュメントを誰が作るのかというポイントを書いてみたいと思います。

・・・物流担当役員との打ち合わせ・・・

担当役員: 倉庫の業務プロセスをドキュメント化しておくことは次回のWMSプロジェクトを見据えても必要だ。早急に着手するように。

物流部長: 了解しました。

・・・上記を受けて物流部内での会話・・・

物流部長: 既存業務のプロセスフロー作りを行う必要があるが、適任はいるか?

センター長: いますが、現業に追われてドキュメント作成に割く時間はありません。

物流部長: 外部ベンダーに頼むしかないかあ。

現場に忙しいリーダーたち

業務フローの整備は現在行われている業務プロセスを記述していくことから始まりますので、現業に精通している業務チームから人員が選定されると考えるのが普通のように思えます。しかし、現実的にはそうならないことが多いのです。

倉庫内には大きく分けて、
「入荷」、「格納・補充」、「補充・集品」、「流通加工・検品」、「積込・出荷」、そして「業務事務」などの工程があり、それぞれで持ち場ごとにリーダーが配置されていることが一般的です。これらのリーダーたちは、それぞれの持ち場の業務が滞りなく行われているか、パートさんや派遣会社からの要員を管理しつつ、前後の関連業務との連携にも気を配りながら、品質と生産性を高める役割を担っています。
このような役割を担っている要員は必然的に業務に精通するようになり、日々現場レベルでの改善活動などにも力を発揮されていることが多く、会社からすると非常に心強い社員となっていると思われます。

「属人化」のトラップ

上記のように、「現場がリーダーなしでは機能しなくなる」状況は業務の「属人化」に陥っている可能性が高く、時に改善活動を阻む要因になることがあります。
例えばこんなことがありました。

ある改善プロジェクトで、まずはAs-Is業務プロセスの整理のためにヒヤリングを開始したのですが、なかなか現場リーダーAさんが多忙で時間が取れず、情報集めが進まない。しかしながら、特定の業務に関してはAさんがキーマンになっていて他の人は業務内容を把握していない、というような状況です。倉庫における通常業務であれば特に深くヒヤリングすることなく現場視察で十分把握できることが多いのですが、イレギュラー業務などについては倉庫外の業務である調達や受注プロセス等と関連するケースも多く、より広範囲且つ詳細レベルで業務ヒヤリングする必要があります。

外部ベンダー+新しいリーダーの登用

会社側からしてみると、折角現場リーダーが育ったのに、それが返って「属人化」を生んでしまうというのは大きな損失です。このトラップに陥らないためのポイントは、やはり業務プロセスを整理し、イレギュラー業務などを含めてドキュメント化するところにあると考えています。しかも、これらをリーダーの元で行い、ドキュメント作成後もリーダーが維持・更新を行うことが改善活動を継続的に行う上で重要です。

では、実際のところどのようにリーダーの元でドキュメント化していくのか。私の経験上、熟練した現場リーダーはデスクワークが比較的不得意だったり苦手だったりする人が多くいらっしゃいました。このような現場で業務プロセスを整理しドキュメント化するには、プロフェッショナルの力が必要になります。しかしながら、外部の力を借りて作ったものは往々にして早い段階で形骸化して活用できないドキュメントとなります。

折角作成した業務フローを維持し適時更新し、改善の土台としていくには、適性が合う新しいリーダー候補を選任し、外部ベンダーと共に作業を行わせることが一つの方法です。